結論を先に置きます。スキンケアに何か1つだけ足すなら、日焼け止めが最も割のいい選択です。日常的に使い続けた群で肌の老化の進行が抑えられたという、4年半にわたる無作為化比較試験の結果があります(Hughes 2013、エビデンスA)。
そしてこの分野の失敗は、商品選びよりも量と塗り直しで起きます。SPF50の製品を規定の半分の量で塗ると、実際に得られる防御力は表示値を大きく下回るためです。選ぶ前に、まず塗る量の話から始めます。
紫外線が肌に何をしているのか
紫外線はUVAとUVBの2種類に分かれ、届く深さも引き起こす変化も別物です。
種類 | 届く深さ | 主な変化 | 指標 |
|---|---|---|---|
UVA | 真皮まで | コラーゲンの変性、シワ・たるみに関与。窓ガラスを通過する | PA(+〜++++) |
UVB | 表皮まで | 赤くなる日やけ、メラニンの生成 | SPF(数値) |
季節による差もそれぞれ違います。UVBは5〜8月に大きく増える一方、UVAは冬でも夏の半分程度まで降り注ぎ、日常的な蓄積として働きます(環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」)。曇りの日でも晴天時の6割前後が地上に届くため、天気で判断する運用は成り立ちません。
顔の見た目の変化のうち、かなりの割合を紫外線由来の光老化が占めるという推計もあります(Flament 2013、エビデンスB〜C)。数字そのものは研究の条件によって幅がありますが、加齢の変化と紫外線の変化が重なって進む点は共通した理解です。
SPFとPAの読み方
- SPF: UVBによる赤い日やけを、何倍の時間まで遅らせるかの指標。SPF30で約97%、SPF50で約98%のUVBを防ぎます。30から50への上乗せは1%程度
- PA: UVAの防御力を4段階で示す表示。シワ・たるみを気にするならこちらの段階に目を向けます
日常使いの現実的な着地点はSPF30〜50・PA+++以上です。数値を上げるより、規定量をきちんと塗れる使用感を選ぶほうが防御力に直結します。塗り心地が重くて量を減らしてしまえば、高い数値を選んだ意味も帳消し。
量が9割:顔に必要なのは約0.8g
SPFやPAの表示値は、1平方センチメートルあたり2mgを塗った条件で測定されています。顔全体(約400平方センチメートル)に換算すると約0.8gです。
- クリーム状: パール粒2個ぶん
- 乳液・ジェル状: 500円玉大
実際の使用量は推奨量の4分の1から2分の1にとどまるという報告があります(Petersen & Wulf 2014、エビデンスB)。つまり多くの人は、表示の半分以下の防御力で1日を過ごしています。
確実に量を確保する方法は、2回に分けて塗るやり方です。半量を顔全体に伸ばし、少し置いてからもう半量を重ねます。1回で0.8gを塗り広げようとすると白浮きやべたつきが気になりますが、2回に分ければ違和感が出にくくなります。塗り忘れやすい部位も押さえてください。
- 目のまわり、まぶた
- 小鼻のわき、口のまわり
- 耳、首の後ろ、フェイスライン
- 手の甲
塗り直しの目安
- 屋内中心の日: 2〜3時間おきが理想ですが、現実には昼休みの1回でも防御力の底上げになります
- 屋外に出る日: 2時間おき。汗をかいた後やタオルで拭いた後は都度
- メイクの上から: パウダーやスプレータイプの日焼け止めを重ねます。厳密な量は確保しにくいものの、何も足さない状態より確実に守れます
日常用とレジャー用の選び分け
場面 | 目安 | 選び方のポイント |
|---|---|---|
通勤・室内中心 | SPF30〜50 / PA+++ | 毎日塗れる使用感を最優先。石けんで落とせるタイプも選択肢 |
屋外の予定・散歩 | SPF50 / PA++++ | 塗り直しやすい形状(スティック・スプレー併用) |
海・山・スポーツ | SPF50+ / PA++++ 耐水性 | ウォータープルーフ。2時間おきの塗り直しを前提に |
紫外線吸収剤と紫外線散乱剤(ノンケミカル)の違いも知られていますが、肌がゆらぎやすい人以外は使用感で選んで差し支えありません。散乱剤中心の製品は白浮きしやすく、吸収剤配合の製品は伸びが軽い傾向を持ちます。
価格帯の考え方
日焼け止めは使い切る消耗品です。顔だけでも1日0.8g、塗り直しを含めれば月に50g前後を使う計算になります。高価な1本を大切に使うより、気兼ねなく規定量を出せる価格帯を選ぶほうが理にかなった判断です。1,000〜3,000円台に選択肢は十分あります。
注意点
- 日焼け止めは日やけによるシミ・そばかすを防ぐ目的の製品です。すでにある色素沈着を薄くする働きを期待する場面とは切り分けてください
- 飲むタイプのサプリメントは、塗るケアの補助という位置づけです。置き換えとして使う設計は避けます
- 日傘・帽子・サングラス・衣類との併用は、塗り直しの回数を減らせる現実的な手段です
よくある質問
Q. 家から出ない日も塗るべきですか?
A. UVAは窓ガラスを通過します。窓のそばで過ごす時間が長い日は、塗っておくほうが理にかなっています。1日中窓から離れて過ごすなら省いても構いません。
Q. SPF値は足し算できますか?
A. 下地SPF20とファンデーションSPF20を重ねてもSPF40にはなりません。実際の防御力を決めるのは最も高い数値のほうで、重ねるぶん塗る量を確保しやすくなる点に意味があります。
Q. 子どもの頃に浴びた紫外線はもう取り返せませんか?
A. すでに蓄積した分は戻りませんが、光老化はその後の対策で進行の度合いが変わります。前述の4年半の試験でも、開始時点の年齢に関わらず日常使用群で差が出ました。
まとめ
- 日常的な日焼け止めの使用で肌の老化の進行が抑えられた無作為化比較試験がある(Hughes 2013)
- 顔に必要なのは約0.8g。2回に分けて塗ると量を確保しやすい
- 日常はSPF30〜50・PA+++以上。数値より「毎日規定量を塗れる使用感」を優先する
参考文献
- Hughes MC, Williams GM, Baker P, Green AC. Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013;158(11):781-790.
- Petersen B, Wulf HC. Application of sunscreen — theory and reality. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2014;30(2-3):96-101.
- Flament F, et al. Effect of the sun on visible clinical signs of aging in Caucasian skin. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2013;6:221-232.
- Randhawa M, et al. Daily use of a facial broad spectrum sunscreen over one-year significantly improves clinical evaluation of photoaging. Dermatol Surg. 2016;42(12):1354-1361.
- 環境省. 紫外線環境保健マニュアル 2020.
- 厚生労働省. 化粧品の効能の範囲の改正について(薬食発0721第1号). 2011.



