結論から書きます。40代以降の髪の変化は「髪1本の太さが頭打ちになる」「本数が減る」「不規則なうねり毛と白髪が増える」「頭皮の皮脂が減る」の4つが重なって起こります。化粧品と医薬部外品で対応できるのは、頭皮を清潔に保ち、うるおいを与え、髪の熱・紫外線の損傷を減らす範囲まで。薄毛そのものに国が承認した効能を持つのは、医薬部外品の育毛剤と、医薬品のミノキシジル外用に限られます。変化ごとに根拠の強さ(A〜D)を付け、弱い部分は弱いと明記しました。

加齢による髪の変化は前提であって、恥ずかしいものではありません。

40代以降に起きる4つの変化と根拠の強さ

変化

研究で確認されていること

根拠

太さと本数

日本人女性159人の観察研究で、平均直径と太い毛の割合は40歳頃まで増え、その後は薄毛の進行に伴って減少。毛髪密度、成長期の毛の割合、成長速度は40代以降に低下

B(Tajima 2007)

うねり毛

花王の日本人女性の調査で、不規則に細かくうねった毛の割合が年齢とともに増加。増える仕組みは未解明

C(メーカー調べ)

白髪

4,192人の国際調査で、45〜65歳の74%に白髪(平均27%)。アジア系は白人系より少なく、「50歳で半数が半分白髪」の通説は実際には6〜23%

B(Panhard 2012)

皮脂と頭皮

女性の皮脂分泌は閉経後に徐々に減少(Pochi 1979)。韓国の200人比較では、50代は20代より頭皮の皮脂量とpHが低く(特に女性)、毛髪密度も男女とも低下

B(Lee 2023)

Tajima 2007で直径の低下が見られたのは薄毛が進行した人で、加齢だけで全員が細くなる結果ではありません。40代で最初に起きるのは「太くならなくなる」と「本数が減る」の2つです。

閉経と髪、男性型脱毛症との違い

更年期の皮膚と髪を扱ったレビューは、閉経後の髪の症状として「成長と密度の低下(びまん性の休止期脱毛、または女性型脱毛症)」と「髪質・構造の変化」を挙げています(Zouboulis 2022、レビュー)。髪や肌の症状だけを理由にしたホルモン補充療法の適応はないとも明記しており、判断は婦人科の領域です。

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」は、女性の薄毛を「女性型脱毛症」として男性型と区別しました。男性の生え際や頭頂部から進む型と違い、女性では頭頂部の比較的広い範囲が薄くなり、更年期に多発すると記載されています。診断の前提として甲状腺疾患、貧血、急激なダイエット、薬剤による脱毛の除外が挙げられており、急に抜ける・斑状に抜ける場合は製品選びの前に皮膚科です。

化粧品・医薬部外品・医薬品の境界(髪と頭皮)

文言は厚生労働省の通知と承認内容からの引用です。

区分

言える範囲(承認・通知の文言)

対象

化粧品(シャンプー、トリートメント、頭皮用ローション等)

頭皮、毛髪を清浄にする/頭皮、毛髪をすこやかに保つ/頭皮、毛髪にうるおいを与える/毛髪の水分、油分を補い保つ/毛髪にはり、こしを与える/毛髪をしなやかにする/フケ、カユミを抑える/裂毛、切毛、枝毛を防ぐ(厚生労働省 2011、56項目)

髪の手ざわり・頭皮の乾燥

医薬部外品(薬用シャンプー・リンス)

ふけ、かゆみを防ぐ/毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ/毛髪・頭皮をすこやかに保つ(厚生労働省 2017)

ふけ・かゆみ

医薬部外品(育毛剤・養毛剤)

育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛(厚生労働省 2017)

抜け毛の予防

医薬品(一般用・第1類)

壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防(ミノキシジル外用、男性用5%・女性用1%)

壮年性脱毛症

医薬品(医師の処方)

フィナステリド、デュタステリドの内服。推奨度は男性型脱毛症A、女性型脱毛症D(行うべきではない)

男性型脱毛症

最も混同されるのが、医薬部外品の「発毛促進」と医薬品の「発毛」。育毛剤に認められた文言は「脱毛の予防」「発毛促進」までで、「発毛」を効能として表示できるのは医薬品のミノキシジル外用だけです。1%女性用の添付文書は、20歳未満、妊娠・授乳中、壮年性脱毛症以外の脱毛症の人は使えないと定め、判定は少なくとも6か月の継続後としています。

ガイドラインの推奨度にも幅があり、ミノキシジル外用はA(行うよう強く勧める)、医薬部外品の有効成分でもあるアデノシンは男性型B・女性型C1、t-フラバノンやサイトプリン・ペンタデカンはC1(行ってもよい)です。

洗う頻度:根拠があるのは「洗いすぎ」より「洗わなすぎ」の害

アジア人対象の2つの研究では、週1回より毎日の洗髪のほうが、ふけ・かゆみ・ツヤの客観指標と自己評価の両方で良好で、毎日洗っても髪への客観的な悪影響は観察されませんでした(Punyani 2021、エビデンスB)。費用をメーカーが全額負担した研究である点は差し引きが要るものの、「40代からは洗う回数を減らすべき」という説を支持する結果は見つかりませんでした。

洗い方の手順は比較試験の根拠を確認できておらず、意見として書きます。湯温は38〜40℃程度、泡立ててから指の腹で頭皮を動かし、すすぎは長めに。頭皮用の保湿ローションは乾かした後の頭皮に直接つけます。

熱と紫外線:髪そのものの損傷に根拠がある対策

髪は生きた細胞ではないため、受けた損傷は元に戻りません。

ドライヤーの熱。毛束を30回洗って乾かす実験では、温度が高いほど表面の損傷が増える一方、自然乾燥した群だけに細胞膜複合体(内部の接着層)の損傷が見られました。結論は「15cm離して動かしながら乾かすほうが自然乾燥より損傷が少ない」です(Lee 2011、エビデンスC・毛束実験)。

紫外線。紫外線はキューティクルと内部のタンパク質を分解し、色の変化と強度の低下を引き起こします(Nogueira 2004、エビデンスC・毛髪試料)。花王は2023年、表層のうねりの一因として紫外線でS-S結合が切れて歪んだまま再結合する現象を報告し、紫外線を遮ると発生が抑えられたと発表しました(実験用毛髪、C)。帽子や日傘は髪の形状にも意味がある対策です。うねりの発生を止める効能は化粧品にも医薬部外品にもなく、対策は「増えた毛を扱いやすくする」が中心になります。

根拠が弱い、または確認できないこと

  • 白髪を抜くと増える: 隣の毛の色に影響する仕組みは確認されていません。毛包を傷めるため、切るほうが無難です(D)
  • 頭皮マッサージで髪が太くなる: 日本人男性9人が24週間続けた研究で直径が0.085mmから0.092mmに増えましたが、本数は増えず、対照群のない小規模試験です(Koyama 2016、C相当)
  • ノンシリコンのほうが頭皮によい: シリコンが毛穴をふさぐという主張を支持する研究は確認できませんでした
  • 湯だけで洗う: 頭皮の状態を比較した研究を確認できませんでした

「根拠がない」は「効果がない」と同じ意味ではありません。ただし予算は承認された範囲の製品が先です。目安は化粧品のシャンプーと頭皮用ローションが月1,000〜3,000円、医薬部外品の育毛剤が月2,000〜5,000円台、ミノキシジル外用が月5,000円前後です。

皮膚科に相談する目安

  • 短期間で抜け毛が急に増えた、円形や斑状に抜けている
  • ふけが大量に出る、頭皮が赤い、強いかゆみが続く(脂漏性皮膚炎などの可能性)
  • 女性で頭頂部の分け目が広がってきた(女性型脱毛症の診断)
  • 男性で生え際や頭頂部の後退が気になる(男性型脱毛症の診断)

まとめ

  • 40代の髪は「太くならなくなる」「本数が減る」「うねり毛・白髪が増える」「皮脂が減る」の4つが重なる。前提として受け止めてよい変化
  • 化粧品は「すこやかに保つ」「うるおいを与える」「はり、こしを与える」まで。「発毛促進」「脱毛の予防」は医薬部外品の育毛剤、「発毛」は医薬品のミノキシジルの領域
  • 毎日の洗髪に髪への悪影響は観察されていない。ドライヤーは15cm離して動かす、紫外線は帽子で遮る
  • 急な脱毛・斑状の脱毛・頭皮の赤みは、製品選びの前に皮膚科へ

参考文献

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  15. 花王株式会社 ヘアケアサイト. うねり毛の増加と、ツヤ・まとまりにくさ(髪の知識). https://www.kao.com/jp/haircare/hair/4-3/